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刺青物語〜蓮の花のように〜



刺青物語〜蓮の花のように〜
は、以下をお読みください。


http://tuzurukotoba.jugem.jp/?eid=876


通い始めてすぐ、Rさんは
時間に遅れてくるどころか
ずいぶん早くに来られ
直前まで車の中で
待ってくれているようになった。

「私、高速道路は怖くて
 走れないからね
 下道を通ってきますねん。」

真面目で実直な性格がうかがえる。

Rさんの運転で
だいたい1時間ぐらいかかる所から
通ってくださっていた。

「前回の傷の治りはどうですか?」

やはり、体の事が気にかかる。

「はい、順調です。かゆくてかゆくて
 たまりません!」

いつもの、Rさんスマイルで笑っていた。

「ヒスイちゃん!今日も宜しくねっ。」

そう言って、準備をしながら
当時飼っていた
シェパードのヒスイと
いつも挨拶をかわしてくれた。

ヒスイはいつも、お客様の隣で
お客様の体に寄り添いながら
仕事の間中、大人しく寝ているのが
仕事だった。

体が大きくて体重は30キロ弱。
犬が嫌いな人には、
怖い存在だと思うのですが

ヒスイは愛らしい性格で
犬好きな人にとっては
たまらない癒しをもたらす
存在だったらしい。

犬種で大体の性格は判断できるが
犬にもそれぞれの個性がある。
仕事の間中、
大人しく居れるようになるまで
訓練するのに、大変な労力がかかった。

また、普通に犬を飼うのと違って
衛生面に気を付け
ボディーチェックは毎日欠かせない。


まだ世間では
認知度は低いかもしれないが

高度な訓練を受け
病院でセラピー犬として
人の心や身体のリハビリテーションを
目的として活躍する犬もいる。


愛玩犬として家で飼うのであれば
必要最低限の訓練があれば
いう事はないと思う。

犬も人と同じく
好きに生きていてほしいと
ヒスイが亡くなった時に思った。

「先生、
 やっぱり片方だけっておかしいでしょ?
 右が終わったらね、
 左に今度は下りの龍と蓮の花を
 入れたいんよ。

 それでね、この刺青が終わる頃
 私、何かが変われる気がするんよね。」

Rさんが、そう言っていたのは
同棲していた彼氏と折り合いがつかず
ずいぶん悩んでいた事が原因だった。

「彼はねー、全然思いやりがない。
 私の事が好きなんじゃないんよね。
 私のお金が目当て。」

そう話してくれるRさんの表情が
今までにないほど、険しくなった。
ずいぶん大きなお金も貸していたようで
返ってくる見込みもないらしい。

「お金貸した挙句、彼のせいで体壊してね。
 生死の境をさまよったんよ。
 意識がないから分からんかったけど
 お医者さんにも、
 もうあかんって、言われてたらしい。
 やから、ちゃんと仕事も出来んようになった。

 けどたまにね、こんな私にも
 仕事せえへんか〜って
 声かけてくれるご夫婦がいてね
 祭りの時とか
 テキヤのカステラ焼く仕事
 手伝ってって言うてもらえるんよね。

 でも
 なんも出来へんから
 怒られてばっかりやねんけど
 喋ることだけは、出来るから
 接客担当。
 そんな私にも、ちゃんとした日当くれて
 奥さんはいつもありがとうって
 言うてくれるねん。
 ありがたいなぁ。。。」

そう言って微笑んだ。

「なんでその彼と、別れないんですか?」
単刀直入に聞いてみた。

「別れてくれへんのよねー・・・。
 ハッキリと好きでもないって言うてるし
 あんたみたいな男は
 馬に蹴られて死んでまえ!って言うたるねん。」

馬もさぞかし、嫌やろう・・・と
心の中で呟きながら

「別れてくれへんのは
 Rさんの事が
 好きだからじゃないんですか?」

と、たずねた。

「イヤ、お金でしょ。
 ほんでなー、刺青に使うお金なんか
 もったいないって言うねん!
 
 私が、自分の為に
 私の好きな事をするのに使うお金や!

 あんたの為に使うお金に比べたら
 よっぽど価値があるわっ!
 って、言うたってん。
 私の刺青見ても
 知らん顔するしなー

 ちょっと薬塗って?って言うても
 文句言われる。

 やから、二度と言わへん!」

Rさんは、ずいぶん憤慨していた。

刺青に理解を示してくれる男性の方が
少ないかもしれん・・・
という言葉を、私は飲み込んだ。

「それに貸したお金が返ってこうへんぶん
 私を病気にさせたぶん
 働らいてもらわなっ!
 私、鬼やろ?」

彼女の声は荒立ち
怒りは、ピークだった。
おそらく、
彼女の病気を後押ししている要因の一つは

この怒りにあると感じた。

母への怒り
彼への怒り
人間というものへの怒り。

そして、その根底に
愛を求める想いと
切なさと寂しさの入り混じった
やり場のない感情を
押しこらえているように感じた。

私は彼女の事を、冷たい人間とも
鬼やとも、思ったことはない。

むしろ、情に厚く
少々素直ではないが
繊細な女性なんだと感じていた。

私やったら、四の五の言わず
そんな男は追い出しているに違いない。

「やぁ、もうこんなに進んだん?」

彼女の肌は柔らかく
墨もよく滲んでくれた。

「ハイ、肌もやわらかくて
 墨もよく入ります。
 色が馴染む頃が楽しみですね!」

そういうと、彼女は嬉しそうだった。

さほど、出血があるわけでもなく
傷の治りも良い。

しかし少々やせ過ぎで、
栄養をとっていないのではないかと
心配になり

「ご飯食べてますか?」
と、たずねると案の定

「あんまり食べられへんのです。」
そう正直に答えてくれた。

医師から、栄養のサプリメントを
もらっているそうで
それを飲んでカバーしているらしい。

「倒れんようにしてくださいよっ?」
そう言いながら消毒をし
いつものように、写真を撮った。

「この写真をねー、
 毎回現像しに行くのが楽しみで。」

どうやら
近所のKカメラの店員のお兄ちゃんが
彼女の刺青の写真に、驚くと同時に
嬉しそうな表情を見せるのだという。

その様子を見て、また彼女も
小悪魔のような笑みを浮かべ
嬉しそうに笑ったのだろうと
そんな光景が目に浮かんだ。

つづく

 

 






 
| 心の言葉〜刺青編〜 | 20:20 | comments(0) | trackbacks(0) | |
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