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刺青物語〜蓮の花のように〜

新しい連載が 始まりました。
宜しかったら、ご完読ください。
刺青を背負った人の物語です。




第一章〜はじまり〜

今朝はやく、荷物が届いた。

お歳暮にしては
異物な形の
紙袋に包まれた大きな荷物。

送り主を見ると
先日亡くなったRさんの
娘さんからでした。


一年ほど前、Rさんから
一本の電話がかかってきた。

「若い頃、
彫豊先生にお世話になって
背中に刺青を彫ってもらった者です。

また新たに、
彫りたいと考えているのですが
相談にのっていただけませんか?」

電話の後ろで数匹の犬が
ワンワンと元気に吠えている様子が
うかがえた。

「分かりました。では、後日
詳しい打ち合わせをしましょう。」

私はそう言って、日を合わせ予定を組み
彼女と会う事にした。

その後も
彼女の事を思い出そうとしたが
この時は、お名前だけでは
お顔も、どんな刺青だったかも
思い出せないまま。

打ち合わせの当日
玄関の前で、
犬猫たちの日向ぼっこに付き合いながら

とても方向音痴で・・・と
電話口で不安そうだった
Rさんがやってくるのを待っていた。

案の定、何度も道を間違え
電話をくれた。
そして時間に遅れ

そこに訪れた彼女は
真っ赤な口紅をぬり

濃いえんじ色のブーツをはき
タイトなジーンズに
ルーズなセーターをはおった

とってもお洒落な
いで立ちで
颯爽と現れた。


「こんにちは!お久しぶりです!」

お互いに挨拶をかわし
元気そうな笑顔の彼女を
部屋に通した。

お顔だけでは
まだ思い出せない。

私達彫師は、仕事の間中
お客様の体と向き合い
仕事をしているので
刺青が完成、終わった後では
お顔を思い出せないことが
多くある。

「何を彫っていらっしゃいましたか?」
そう問いかける私に

彼女はもの応じせず服を脱いで
背中を見せてくれた。

その作品は、彫豊先生が
幾年か前に彫られたもので

色の一部が色あせてきたので
タッチアップしてほしいというものと

新たに、何かを彫りたいと
いう希望を話してくれた。

そして、言いにくそうに

「その前に・・・
実は私、病を抱えているんです。
うつる病気では決してありません。
でも、この先、
命がどうなるかは分かりません」

そんな言葉を、私に投げかけた。

私がどんな反応をするのか
不安だっただろうと思う。
断られるのも承知で
此処へ来たと、後で話してくれた。

「まずは、そんな状態の時に
刺青を彫っても、体は大丈夫なのか?

家族は何といっているのか?
担当されている医師の許可はあるのか?」

思いつく質問を
彼女に返した。

「医師は、反対ではあるが
Rさんの意志を尊重すると言っていました。」

そう答えた。
こんな風に患者の意志を
尊重してくれる医師が
いるのかどうか
私には分からないが

その後も、
刺青が増え続けながらも
治療や定期検診を
受けに行っておられた事を思うと

医師はそれを仕事として
受け入れるしかなかったのだろうと思う。

しかし人として
刺青を褒めてくれた事もあると
彼女は嬉しそうに話してくれた。

合間に、彫豊先生との
やりとりや
当時彫っていた頃の話を
お聞きするうちに

Rさんの事を思い出した。
顔はやはり覚えていなかったが

以前Rさんが
亡くなられた旦那様と一緒に
営業されていた飲食店で
取り扱っていた
めずらしいお肉を
差し入れしてくれたことや

当時、彫豊先生が親しくされていた
絵描きの大学生さんの
モデルになったことや

故・彫豊の懐かしい話を聞きながら

断片的な記憶が繋がり蘇った。

人は、どこかで繋がっているんやなぁ。
と、
この一期一会に
感謝した。

「無理は決してしないこと
 医師の診断は、必ず知らせてくれること」

それを条件に
私は、この仕事を受けることにした。

彼女のプライベートに
踏み込んだ仕事が始まった。
正直、この時は重たかった。

ただでさえ、世間では批判も多い
刺青という世界で生きている私にとって

どんな誹謗中傷があろうと
受けて、たたなければならない。

私は何故、
刺青師という仕事しているのか?
私は何故、
ここに存在するのか?

昔からの長い問いかけへの
答えを見つけるための
自分との戦いが始まった。

つづく






























 
| 心の言葉〜刺青編〜 | 19:09 | comments(0) | trackbacks(0) | |
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